詳細版 | 音が鳴る・完全オフライン・追加課金ゼロ
例の調は基本 Cメジャー/Cマイナー に統一。
細かい用語の前に、まず地図を持ちましょう。コード理論は、つきつめると5つのことだけです。ここが腑に落ちれば、あとの章は「地図の細部の説明」にすぎません。
これが全部の土台です。たった3つの役割で音楽は回っています。
「家 → 出かける → 帰りたい → ただいま」を鳴らすと:
名曲のほとんどは、この"行って帰る"の変奏です。まずこれだけで世界の半分が見えます。
和音は3つ以上の音の重なり=ひとつの"気分"。基本は2つ:
— あとは7thやテンションで"味付け"するだけ。
1つの曲は、だいたい決まった7色(7つのコード)で描きます。これが「ダイアトニック」。 ときどきパレットの外の色を1滴だけ借りると、ハッとしたり切なくなる(=借用・サブドミナントマイナーなど)。それだけのことです。
同じ7音でも、どの音を中心(ホーム)に感じるかで雰囲気が一変します。これがモード(旋法)。
例えばリディアンは「ファ♯」が効いて、明るいのにフワッと宙に浮く感じ。だからゲームの空・冒険・ファンタジーのテーマに大人気です(『シンプソンズ』のテーマも有名)。
→ 弘樹さんの言うとおり、モードは"使われる道具"です。詳しくは第9章。覚え方も用意しました。
「家→出かけ→帰る」の並べ方には定番の型があります(王道進行・カノン進行など)。 料理のレシピみたいなもので、型を1つ覚えると、似た曲が全部見えてきます(第14章)。
本書では各所で「なぜそう感じるのか」を説明します。その答えは、ほぼ次の4つの原理の重なりです。先にこれを掴むと、あらゆる和音の効果が"理由つき"で腑に落ちます。
脳は次に来る音を無意識に予測しています。予測どおりだと「安心」、外れると「おっ/ゾクッ(frisson)」。音楽の感動の多くは、"予測をどう裏切るか"の設計です。
和音から和音へ、共通の音が残るほど「つながり・滑らかさ」、半音で動く音があるほど「引力・なまめかしさ」。どの声部がどう動くかが感情の細部を決めます(→各進行の譜面で●の動きを見てください)。
周波数比が単純な音ほど協和=安定、複雑なほど不協和=緊張(第1章)。緊張は「解決を求める力」を生み、解決した瞬間に快が訪れます。
私たちは育った文化の音楽で、トニック=家・ドミナント=帰りたいという"重力"を身体に覚え込んでいます。だから理屈でなく身体で「安定/不安定」を感じます。
すべての理論は「2音の距離=音程」から始まります。音程には数(度数)と質(完全・長・短・増・減)の2要素があります。
1オクターブは12の半音に等分されます(平均律)。半音=隣どうし、全音=半音2つ。
| 音程名 | 音(C) | 半音 | 協和/不協和 | ♪ |
|---|---|---|---|---|
| 完全1度(ユニゾン) | C | 0 | 完全協和 | |
| 短2度 | D♭ | 1 | 強い不協和 | |
| 長2度 | D | 2 | 不協和 | |
| 短3度 | E♭ | 3 | 協和(暗) | |
| 長3度 | E | 4 | 協和(明) | |
| 完全4度 | F | 5 | 文脈次第 | |
| 増4/減5(トライトーン) | F♯/G♭ | 6 | 最も不安定 | |
| 完全5度 | G | 7 | 完全協和 | |
| 短6度 | A♭ | 8 | 協和 | |
| 長6度 | A | 9 | 協和 | |
| 短7度 | B♭ | 10 | 不協和(動) | |
| 長7度 | B | 11 | 不協和(浮) | |
| 完全8度 | C | 12 | 完全協和 |
※「完全」が付くのは1・4・5・8度。それ以外は「長/短」。完全・長を半音広げると「増」、狭めると「減」。
下の音を1オクターブ上げると音程が「ひっくり返る」。度数は9から引いた数/質は反転(長↔短・増↔減・完全↔完全)。
⟷ / ⟷
オクターブを超える音程。9度=2度+オクターブ、11度=4度、13度=6度。テンション(第4章)の正体です。
スケール=曲で使う音の選抜メンバー。全音・半音の並び(インターバル構造)が響きの個性を決めます。
C:ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド
| 度 | I | II | III | IV | V | VI | VII |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 名称 | 主音(Tonic) | 上主音 | 中音 | 下属音(SD) | 属音(D) | 下中音 | 導音 |
| 音(C) | C | D | E | F | G | A | B |
第7音は、主音へ半音で迫るとき「導音(leading tone)」、全音なら「下主音(subtonic)」と呼び分けます。
| 種類 | 音 | 特徴 | ♪ |
|---|---|---|---|
| ナチュラル | C D E♭ F G A♭ B♭ | 自然な短調。エオリアンと同じ | |
| ハーモニック | C D E♭ F G A♭ B | 7thを上げ導音化。A♭→Bに増2度 | |
| メロディック(上行) | C D E♭ F G A B | 6・7を上げ滑らか | |
| メロディック(下行) | C B♭ A♭ G F E♭ D | ナチュラルに戻る(伝統) |
| スケール | 音(C) | 用途 | ♪ |
|---|---|---|---|
| メジャーペンタトニック | C D E G A | 明るく外さない・ポップ/フォーク | |
| マイナーペンタトニック | C E♭ F G B♭ | ロック/ブルースのソロ定番 | |
| ブルーススケール | C E♭ F G♭ G B♭ | ブルーノート(♭5)で泣き | |
| ホールトーン | C D E F♯ G♯ A♯ | 全音だけ=浮遊・夢/不安(aug) | |
| ディミニッシュ(全半) | C D E♭ F G♭ A♭ A B | 緊張・dim7コード上 |
12のキーを完全5度ずつ並べた円=理論の地図。調号・近親調・転調・ツーファイブがここに集約されます。
| ♯の数 | 長調 | 短調 | ♭の数 | 長調 | 短調 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0 | C | Am | 0 | C | Am | |
| 1♯ | G | Em | 1♭ | F | Dm | |
| 2♯ | D | Bm | 2♭ | B♭ | Gm | |
| 3♯ | A | F♯m | 3♭ | E♭ | Cm | |
| 4♯ | E | C♯m | 4♭ | A♭ | Fm | |
| 5♯ | B | G♯m | 5♭ | D♭ | B♭m | |
| 6♯ | F♯ | D♯m | 6♭ | G♭ | E♭m | |
| 7♯ | C♯ | A♯m | 7♭ | C♭ | A♭m |
下半分の F♯=G♭、C♯=D♭、C♭=B は同じ音=異名同音(エンハーモニック)。同じ鍵盤を別名で書いているだけ。
→ 実際に鳴らせる五度圏は付録へ。
コードの基本原理は「3度を積む」。積む数と各3度の長短で性質が決まります。
| 種類 | 構成(C) | 3度の積み方 | ♪ |
|---|---|---|---|
| メジャー | C E G | 長3度+短3度 | |
| マイナー | C E♭ G | 短3度+長3度 | |
| オーグメント | C E G♯ | 長3度+長3度 | |
| ディミニッシュ | C E♭ G♭ | 短3度+短3度 |
| 記号 | 構成(C) | 性格 | ♪ |
|---|---|---|---|
| CM7 (maj7) | C E G B | 浮遊・洗練 | |
| C7 (dominant7) | C E G B♭ | 解決欲・緊張 | |
| Cm7 | C E♭ G B♭ | 落ち着いた暗さ | |
| CmM7 (minor-major7) | C E♭ G B | 妖しい・スパイ映画 | |
| Cm7♭5 (ø) | C E♭ G♭ B♭ | 切ない・ii of minor | |
| Cdim7 (°7) | C E♭ G♭ A | 劇的緊張・全部短3度 | |
| C6 | C E G A | 明るく安定・終止に | |
| Cm6 | C E♭ G A | おしゃれな短和音 | |
| Csus4 | C F G | 宙吊り→3度へ解決 | |
| Csus2 | C D G | 開放的・透明 |
sus4の解決:
四和音の上にさらに3度を積む音。色彩を加える。
| 記号 | 足す音(C) | ♪ |
|---|---|---|
| Cadd9 | D(7thなしで9を足す) | |
| C9 | B♭ + D | |
| C11 | + F(ドミナントで多用) | |
| C13 | + A | |
| CM9 | B + D |
ドミナント7th上で緊張を最大化する変化音。解決時の快感が増す。
一番下の音(ベース)を変えたもの。和音は同じでも表情と滑らかさが変わる。
| 形 | 例(C) | 低音 | 数字付低音 | ♪ |
|---|---|---|---|---|
| 基本形 | C/E/G | C(根音) | — | |
| 第1転回 | C/E(E G C) | E(3度) | ⁶ | |
| 第2転回 | C/G(G C E) | G(5度) | ⁶₄ |
ベースを階段状に動かす例:
例:Dm7(♭5)/A♭ = ルートD・マイナー・7th・5度を♭・ベースA♭。記号は左から「何の和音か→どんな色か→低音は何か」の順で読む。
スケールの各音上に3度を積むと、その調の7つの基本コード。コード進行の語彙そのものです。
| 度数 | コード | 質 | 機能 | ♪ |
|---|---|---|---|---|
| IM7 | CM7 | maj7 | トニック(T) | |
| iim7 | Dm7 | m7 | サブドミナント(SD) | |
| iiim7 | Em7 | m7 | T(弱) | |
| IVM7 | FM7 | maj7 | SD | |
| V7 | G7 | dom7 | ドミナント(D) | |
| vim7 | Am7 | m7 | T | |
| viim7♭5 | Bm7♭5 | ø7 | D |
マイナーはナチュラル/ハーモニック/メロディックで音が変わるため、ダイアトニックも複数あります(Cマイナー)。
| 由来 | i | ii | III | iv | V | VI | VII |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ナチュラル | Cm | Dø | E♭ | Fm | Gm | A♭ | B♭ |
| ハーモニック | Cm | Dø | E♭aug | Fm | G(7) | A♭ | B° |
| メロディック | CmM7 | Dm | E♭aug | F | G | Aø | Bø |
重要:短調の強い終止は、ハーモニックマイナー由来の G7 → Cm(V7→i)。導音Bが必要なため。
7つのコードは役割で3グループに。これが進行の「重力」です。
| 機能 | 意味 | 主役 | 代理 |
|---|---|---|---|
| トニック T | 安定・家・解決先 | I (C) | vi(Am)・iii(Em) |
| サブドミナント SD | 展開・外出・予備 | IV (F) | ii(Dm) |
| ドミナント D | 緊張・帰りたい | V(7) (G7) | vii°(Bø) |
基本の循環 T→SD→D→T: T→D→T:
G7の中のシ&ファ(トライトーン)が、Cのド&ミへ半音で吸い込まれる。これが「帰ってきた」感の正体。
→
| 根の動き | 強さ | 例 |
|---|---|---|
| 4度上(5度下) | 最強・推進力 | G→C, D→G |
| 2度 | 力強い・上昇感 | F→G |
| 3度 | 柔らか・共通音多い | C→Am, C→Em |
同機能・共有音のコードは入れ替え可能。進行に変化と深みを与えます。
| 機能 | 主役 | 代理(共有音) | 聴き比べ |
|---|---|---|---|
| T | C(ドミソ) | Am(ラドミ)/Em(ミソシ) | |
| SD | F(ファラド) | Dm(レファラ) | |
| D | G7 | Bø7 / D♭7(裏) |
原型 C–F–G–C を代理化:
3度関係だが調外の和音(例:C→A♭、C→E)。映画音楽の「ハッとする」転換。
(トライトーンが解決)
SD→D→T を一息で言う、最重要の文型。
メジャー: マイナー:
調内の各コードへ向かう「一時的なV7」。仮の解決先を作り、彩りと推進力を足す。
| 記号 | コード | 解決先 | ♪ |
|---|---|---|---|
| V7/ii | A7 | Dm | |
| V7/iii | B7 | Em | |
| V7/IV | C7 | F | |
| V7/V | D7 | G | |
| V7/vi | E7 | Am |
応用:C–A7–Dm7–G7–C(セカンダリーで彩る)
目的コードの前に、その調のii-Vをまとめて挿入。 Em7♭5–A7–Dm(→Dmへのツーファイブ):
メジャースケールを「どの音から始めるか」で7つの旋法が生まれます。同主音(C)で並べて性格を聴き比べます。
| 旋法 | 音(C) | 特徴音 | キャラ | ♪ |
|---|---|---|---|---|
| リディアン | C D E F♯ G A B | ♯4 | 最も明るい・幻想的 | |
| イオニアン(長調) | C D E F G A B | — | 標準的に明るい | |
| ミクソリディアン | C D E F G A B♭ | ♭7 | 明るいがブルージー | |
| ドリアン | C D E♭ F G A B♭ | ♭3+長6 | 暗いが洗練・ジャズ/ファンク | |
| エオリアン(短調) | C D E♭ F G A♭ B♭ | — | 標準的に暗い | |
| フリジアン | C D♭ E♭ F G A♭ B♭ | ♭2 | スペイン/不穏 | |
| ロクリアン | C D♭ E♭ F G♭ A♭ B♭ | ♭2+♭5 | 最も暗く不安定 |
7つの名前はすべて古代ギリシャの地名・民族名。意味がないので覚えにくいだけ。「地名+キャラ+語呂」でフックを作れば一気に定着します。
| 旋法 | 由来(地名・民族) | 特徴音/キャラ | 覚え方フック |
|---|---|---|---|
| イオニアン | イオニア人(小アジア西岸) | =長調・普通に明るい | 「イオニアン=ふつうの長調」 |
| ドリアン | ドーリア人(ギリシャ本土) | ♭3だが♮6・暗いのに洗練 | 「ドリアはおしゃれ」=暗いけどお洒落 |
| フリジアン | フリギア(小アジア中部) | ♭2・不穏・スパニッシュ | 「フリ=怪しい素ぶり(♭2)」 |
| リディアン | リディア(小アジア西部) | ♯4・最も明るい・幻想的 | 「リッチに明るい(♯4)」 |
| ミクソリディアン | mixo「混ぜた」+リディア | ♭7・明るいがブルージー | 「ミックスされたリディアン」 |
| エオリアン | エオリア人(小アジア沿岸) | =自然短調・普通に暗い | 「エオリアン=ふつうの短調」 |
| ロクリアン | ロクリス(ギリシャ中部) | ♭2♭5・最も不安定 | 「ロクでもない(♭5)」 |
ドリアンのヴァンプ(Cm7↔F7を往復): ミクソリディアン(C7↔B♭):
| 名称 | 使う場面 |
|---|---|
| リディアン♭7(リディアンドミナント) | ♯11を持つドミナント(C7♯11)上 |
| オルタード(スーパーロクリアン) | オルタードドミナント(C7alt)上=解決前の極限緊張 |
C7alt→Fm の解決感:
別の旋法(主に同主短調 Cマイナー)からコードを借りて、長調に陰影や意外性を足す技。
SD(F)を短く(Fm)。核は ♭6(C調でA♭)。A♭→G の半音下行が"泣き"を作ります。
| コード | 構成 | 度数 | 呼び名 | ♪ |
|---|---|---|---|---|
| Fm(7) | F A♭ C (E♭) | iv | 基本のSDm | |
| Dm7♭5 | D F A♭ C | iiø7 | 哀愁のツーファイブ用 | |
| A♭(M7) | A♭ C E♭ (G) | ♭VI | 浮遊感 | |
| D♭(M7) | D♭ F A♭ (C) | ♭II | ナポリの和音 | |
| B♭7 | B♭ D F A♭ | ♭VII7 | 裏口ドミナント |
共通項はすべて A♭(♭6)。だから互いに代理になります。
| 借用和音 | 構成 | 効果・用途 | ♪ |
|---|---|---|---|
| ♭III (E♭) | E♭ G B♭ | 意外な明るさ・ロック | |
| ♭VI (A♭) | A♭ C E♭ | 壮大・エモい | |
| ♭VII (B♭) | B♭ D F | 高揚・アニソン定番 | |
| iv (Fm) | F A♭ C | 切なさ |
♭VI–♭VII–I(高揚): ♭III–♭VII(ロック):
短調の曲を最後だけ長三和音(I)で終える=救済の光。
| コード | 合うスケール |
|---|---|
| IM7 (CM7) | イオニアン / リディアン(♯11) |
| iim7 (Dm7) | ドリアン |
| V7 (G7) | ミクソリディアン / オルタード / リディアン♭7 |
| im7 (Cm7) | ドリアン / エオリアン |
| iiø7 | ロクリアン(♮2) |
コードの響きを濁す音=アボイド(例:メジャー上の11th=ファはミと半音でぶつかる)。テンションは「乗せていい彩り音」。
G7 ⇔ D♭7(トライトーン共有)。ベースが半音で降りる洒落た動き。
iv–♭VII7–I(Fm7–B♭7–CM7)。SDmとドミナントを混ぜた"裏口"の解決。
ブルースは I・IV・V を全部ドミナント7thに。
3-7だけで滑らかに繋ぐ(ガイドトーン): クォータル:
低音+数字で和音と転回を示す記法。三和音は5/3(=省略)、第1転回=6、第2転回=6/4。7thは7→6/5→4/3→4/2。
| 終止 | 進行 | 印象 | ♪ |
|---|---|---|---|
| 完全正格終止(PAC) | V→I(両方基本形・上声が主音) | 最も強く終わる | |
| 不完全正格終止 | V→I(転回や上声が3/5) | やや弱い区切り | |
| 変格終止(プラガル/アーメン) | IV→I | 柔らかく荘厳 | |
| 半終止 | …→V | 宙吊り・続く感じ | |
| 偽終止(ディセプティブ) | V→vi | 裏切られる意外性 |
V の前に I の第2転回(I⁶₄)を置く=終止を一段ドラマチックに。
| 名称 | 動き |
|---|---|
| 経過音(passing) | 2音の間を順次に通過 |
| 刺繍音(neighbor) | 隣の音へ行って戻る |
| 掛留音(suspension) | 前の音を保留→遅れて解決(4-3,7-6,9-8) |
| 倚音(appoggiatura) | 跳んで入り順次に解決・最も歌う |
| 先取音(anticipation) | 次の和音の音を先に鳴らす |
| ペダル(pedal) | 低音を保続し上で和音が動く |
掛留(4-3):
ナポリ(♭II、多くは第1転回♭II⁶)→V:
増六(A♭とF♯が外へ開いてVへ): →
独+6(A♭ C E♭ F♯)はV7(D♭)と異名同音=転調の隠し扉(第13章)。
曲の途中でキーを変える技。五度圏で近いほど自然です。
| 関係 | 内容 | C調から |
|---|---|---|
| 属調 | 5度上 | G |
| 下属調 | 4度上 | F |
| 平行調 | 同じ調号の短調 | Am |
| 同主調 | 同主音の短調 | Cm |
| 遠隔調 | 調号が大きく違う | F♯ など |
| 手法 | 仕組み |
|---|---|
| ピボット(共通和音) | 両調に共通のコードを渡り板にする(最も滑らか) |
| ダイレクト(突然) | サビで半音上げ等・準備なしで上げる高揚技 |
| クロマチック | 半音進行で新キーのVへ導く |
| 共通音転調 | 1音を保ちつつ周りを変える |
| 異名同音転調 | dim7や独+6=V7の二面性で遠隔調へワープ |
ピボットでC→G(Am=Cのvi=Gのii):
ダイレクト転調(C→D♭へ半音上げ):
dim7ワープ(同じdim7が複数キーのVに化ける):
定番進行を「まるごと再生」(すべてCメジャー基準)。度数で覚えると全キーに移せます。
| 名前 | 度数 | 再生 |
|---|---|---|
| 50s進行(ドゥーワップ) | I–vi–IV–V | |
| 王道進行(4536) | IVM7–V7–iiim7–vim7 | |
| 小室進行 | vi–IV–V–I | |
| ポップパンク/Axis | I–V–vi–IV | |
| カノン進行 | I–V–vi–iii–IV–I–IV–V | |
| 丸の内進行 | IVM7–III7–vim7–(I7) | |
| ジャズ・ターンアラウンド | I–VI7–ii–V | |
| アンダルシア終止 | i–♭VII–♭VI–V | |
| IV–iv–I(切ない) | IV–iv–I | |
| ツーファイブワン | iim7–V7–IM7 | |
| 循環(1625) | I–vi–ii–V |
ここまでは和声=縦(コードを積む・進める)の話でした。音楽にはもう一本の軸=対位法=横(独立した複数の旋律を同時に走らせる)があります。同じ布の縦糸と横糸です。
| 時代 | 何が起きたか |
|---|---|
| グレゴリオ聖歌(〜9C) | 単旋律(モノフォニー)。ハモリなしの1本の線。教会旋法(ドリアン等)の母体=西洋音楽の"根" |
| オルガヌム(9〜12C) | 聖歌にもう1本を平行5度等で重ねた=最初の多声=ハーモニーの誕生 |
| 対位法(ルネサンス 15-16C/パレストリーナ) | 独立した複数の旋律を精緻に編む技に発展 |
| 機能和声(バロック 17-18C/バッハ) | 縦のコード+調性。バッハで縦と横が完全統合 |
正直に言うと、聖歌そのものにコード(和音)はありません。たった1本の旋律です。では何がすごいのか:
=「コードがすごい」の正体は、たぶん"ハモリが無いのに豊かに響く"こと。聞き比べてみてください:
和声が「慣習・記述」寄りだったのに対し、対位法(特に種(species)対位法=フックス『グラドゥス・アド・パルナッスム』1725)は明示ルールのパズル。だから論理・数学が得意な人にむしろ向きます。基本ルール(第1種・要点):
禁止と推奨を聴き比べ(譜面で●の動きも見て):
1声が主題(テーマ)を歌う → 別の声が少し遅れて5度上などで模倣(応答) → 重ね合わせながら展開。 カノン(輪唱)の高度版で、横の独立性(各声が歌える)と縦の調和(合わせて美しい)を同時に成立させる、対位法の頂点です。
キーをクリックでメジャー(外)/マイナー(内)コードが鳴ります。
| 記号 | 構成音(度数) |
|---|---|
| C | 1 3 5 |
| Cm | 1 ♭3 5 |
| C7 | 1 3 5 ♭7 |
| CM7 | 1 3 5 7 |
| Cm7 | 1 ♭3 5 ♭7 |
| Cm7♭5 | 1 ♭3 ♭5 ♭7 |
| Cdim7 | 1 ♭3 ♭5 ♭♭7 |
| Caug | 1 3 ♯5 |
| C6 / Cm6 | 1 (♭)3 5 6 |
| Csus4 / sus2 | 1 4 5 / 1 2 5 |
| C9 / C7♭9 | 1 3 5 ♭7 9 / ♭9 |
| 度 | 1 | ♭3 | 3 | 4 | 5 | ♭6 | 6 | ♭7 | 7 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 音 | C | E♭ | E | F | G | A♭ | A | B♭ | B |
| 意味 | 根音 | 暗 | 明 | SD | 安定 | SDm | 6th | 7th(動) | M7(浮) |
言葉は由来とセットだと一気に覚えられます。「サブドミナント=ドミナントの"下"」のように、語源で意味を腑に落としてください。
| 用語 | 由来 | 覚え方 |
|---|---|---|
| トニック (tonic) | ギリシャ tonos「音・張り」→調の中心の音 | 調の"トーン"の主=主音 |
| ドミナント (dominant) | ラテン dominari「支配する」。主音の次に支配的な5度 | "ドミネート(支配)"する音=V |
| サブドミナント (subdominant) | sub「下」+dominant。主音の下に5度(=4度上) | ドミナントの"サブ(下)" |
| メディアント (mediant) | ラテン medius「中間」。主音と属音の中間=3度 | "ミディアム(中間)"の音 |
| サブメディアント | mediantのさらに下=6度 | 中間音の"下" |
| 導音 (leading tone) | lead「導く」。半音上の主音へ導く | 主音へ"リード"する音 |
| ダイアトニック (diatonic) | ギリシャ dia「〜を通って」+tonos「音」 | 調の"通常メンバー" |
| クロマチック (chromatic) | ギリシャ chroma「色」。半音=音の色づけ | 半音は"クローム(色)" |
| インターバル (interval) | ラテン inter「間」+vallum「杭・壁」 | 2音の"あいだ" |
| オクターブ (octave) | ラテン octo「8」。8番目の音 | "オクト=8"番目 |
| トライトーン (tritone) | tri「3」+tone。全音3つ分(増4度)。中世で"悪魔の音程"とも | "トライ=3"つの全音 |
| ケーデンス/カデンツ (cadence) | ラテン cadere「落ちる」。フレーズが落ち着く=終止 | "落ちて"終わる |
| モード/旋法 各種 | 古代ギリシャの地名・民族名(下記) | 全部"古代ギリシャの地方名" |
| ナポリの和音 (Neapolitan) | 18世紀ナポリ楽派が好んだから | "ナポリ生まれ"の和音 |
| ピカルディの3度 (Picardy) | フランスピカルディ地方由来説 | "ピカルディ産"の長3度 |
| サスペンド (sus) | suspend「吊るす」。3度を保留して吊るす | 解決を"サスペンド(保留)" |
| ディミニッシュ/オーグメント | ラテン「減らす/増やす」 | 5度を縮める/広げる |
| アルペジオ (arpeggio) | イタリア arpa「ハープ」→arpeggiare「ハープのように弾く」 | "ハープ"みたいに分散 |
| カノン (canon) | ギリシャ kanon「規則・ものさし」。厳格な模倣の規則 | 追いかけっこの"ルール" |
| ペンタトニック | ギリシャ penta「5」。5音音階 | "ペンタ=5"音 |
| テンション (tension) | 英 tension「緊張」。和音に張りを足す音 | 文字どおり"緊張"を足す |
| オルタード (altered) | alter「変える」。テンションを半音変化 | "オルター(改変)"した音 |
モード名はすべて古代ギリシャの地名・民族名です:イオニア/ドーリア/フリギア/リディア/エオリア/ロクリス(小アジア〜ギリシャの地域)。中世の教会旋法がこれらの名前を借用しました(※古代ギリシャの音階と中世旋法は厳密には一致しない小ネタも)。「ドリアン=ドーリア人」と人名・地名で覚えると忘れません。